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注意 

これは、平成11年1月26日「民法の一部を改正する法律案等要綱案」について 「民法の一部を改正する法律案等要綱案」の概要より)の該当個所と思われる所を加えてたものであり、法務省の民法の一部を改正する法律案等要綱案」の原文ではありません。

平成11年1月26日

民法の一部を改正する法律案等要綱案

1  成年後見制度の改正の理念   

成年後見制度は,判断能力の不十分な成年者(痴呆性高齢者・知的障害者・精神障害者等)を保護するための制度であり,現行民法上は,禁治産・準禁治産制度及びこれを前提とする後見・保佐制度が設けられている。今回の改正においては,高齢社会への対応及び知的障害者・精神障害者等の福祉の充実の観点から,自己決定の尊重,残存能力の活用,ノーマライゼーション等の新しい理念と従来の本人の保護の理念との調和を旨として,柔軟かつ弾力的な利用しやすい制度を構築するための検討が行われた。

2  成年後見制度の改正に関する検討の経緯及び今後の予定
   法務大臣の諮問機関である法制審議会の民法部会は,平成9年10月以降,福祉関係者を含む一般有識者の参加を得た「成年後見小委員会」において成年後見制度の改正に関する審議を行い,平成10年4月14日,「成年後見制度の改正に関する要綱試案」(以下「要綱試案」という。)を了承し,公表した。関係各界に対する意見照会の結果,要綱試案の制度的枠組み(補助・保佐・後見の三類型の採用,任意後見制度の創設等)を支持する意見が大多数を占めたため,法制審議会の民法部会は,同年9月以降,要綱試案の制度的枠組みに沿って要綱案の策定のための審議を行い,平成11年1月26日,「民法の一部を改正する法律案等要綱案」(以下「改正要綱案」という。)を取りまとめた。今後は,法制審議会総会における改正要綱の決定・答申を得た上で,今通常国会に成年後見制度の改正のための民法改正法案等を提出する予定である。

3  改正要綱案の概要
   要綱試案は,関係各界に対して意見を求めるため,必ずしも条文の順序・文言等にとらわれずに,適宜説明文を加えながら改正の要点を平易に記述するとともに,関連法令(最高裁判所規則を含む。)の規定事項を注記しているのに対し,改正要綱案は,法案の要綱を示すものであるため,原則として,条文の順序・文言のとおり逐条的に記述するとともに,説明文及び関連法令の規定事項を記述の対象から除外している。
 このように,改正要綱案は,要綱試案とは記述の形式を異にするが,実質的な内容においては,要綱試案の制度的枠組みに沿って,意見照会の結果等を踏まえた若干の修正を加えつつ,その内容を法案の要綱として具体化したものである。
(平成11年1月法務省民事局 「民法の一部を改正する法律案等要綱案」の概要より)

第一 民法の一部を改正する法律案

一  禁治産制度及び準禁治産制度の改正


現行の禁治産・準禁治産の制度を,各人の多様な判断能力及び保護の必要性の程度に応じた柔軟かつ弾力的な措置を可能とする制度とするため,補助・保佐・後見の三類型の制度に改める。 (平成11年1月法務省民事局 「民法の一部を改正する法律案等要綱案」の概要より)

1  後見開始の審判

後見類型(禁治産の改正)

精神上の障害により判断能力を欠く常況に在る者を対象とする。
家庭裁判所の「後見開始の審判」とともに「成年被後見人」のために「成年後見人」を選任し,成年後見人は広範な代理権・取消権を付与されるが,新たに,自己決定の尊重の観点から,日用品の購入その他日常生活に関する行為を本人の判断にゆだねて取消権の対象から除外する。
(注1) 要綱試案第一,一1(注2)の「福祉関係の行政機関の申立権」に関しては,他の行政法規中に規定を設けることについて,関係省庁等と協議中である。
(注2) 要綱試案第一(後注)5の「資格制限の縮減」に関しては,@新設の補助類型については資格制限を付さない,A後見・保佐の各類型についても,当該法令中の能力審査の手続により当該資格に相応しい判断能力が担保されるものについては,の欠格条項を削除するという方向で,関係省庁と協議中である。
(平成11年1月法務省民事局 「民法の一部を改正する法律案等要綱案」の概要より)

(一)  審判の要件

精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況に在る者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求によって、後見開始の審判をすることができるものとする。

(二)  成年被後見人及び成年後見人        

後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人としてこれに成年後見人を付すものとする。
   

(三)  取消権

成年被後見人の法律行為は、これを取り消すことができるものとする。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでないものとする。
   

(四)  審判の取消し

(一)に定める原因が止んだときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人(未成年後見人及び成年後見人をいう。以下同じ。)、後見監督人(未成年後見監督人及び成年後見監督人をいう。以下同じ。)又は検察官の請求によって、後見開始の審判を取り消さなければならないものとする。


2  保佐開始の審判

保佐類型(準禁治産の改正)
精神上の障害により判断能力が著しく不十分な者を対象とする。単に浪費者であることを要件とはしない(浪費者の中で判断能力の不十分な者は保佐又は補助の各類型の対象となる。)。
 家庭裁判所の「保佐開始の審判」とともに「被保佐人」のために「保佐人」を選任し,新たに,保佐人に同意権の対象行為(民法第12条第1項(※))について取消権を付与した上で,当事者が申立てにより選択した「特定の法律行為」について審判により保佐人に代理権を付与することを可能にする。代理権の付与は,本人の申立て又は同意を要件とする。
    (※) 民法第12条第1項各号(保佐人の同意を要する行為)についても,遺産分割の明文化等の所要の改正を加える。
(平成11年1月法務省民事局 「民法の一部を改正する法律案等要綱案」の概要より)

(一)  審判の要件

精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求によって、保佐開始の審判をすることができるものとする。ただし、1(一)に定める原因がある者については、この限りでないものとする。


(二)  被保佐人及び保佐人

保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人としてこれに保佐人を付すものとする。
   

(三)  同意権及び取消権

(1)  被保佐人が民法第十二条第一項各号(第三号中「又ハ重要ナル動産」を「其他重要ナル財産」に改め、第六号中「相続ヲ承認シ又ハ之ヲ抛棄スル」を「相続ノ承認若クハ放棄又ハ遺産ノ分割ヲ為ス」に改めるものとする。)に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならないものとする。ただし、1(三)ただし書に定める行為については、この限りでないものとする。

(2)  家庭裁判所は、(一)本文に掲げる者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求によって、被保佐人が(1)に掲げられていない行為をするにもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができるものとする。ただし、1(三)ただし書に定める行為については、この限りでないものとする。

(3)  保佐人の同意を得なければならない行為について保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求によって、保佐人の同意に代わる許可を与えることができるものとする。

(4)  保佐人の同意を得なければならない行為でその同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、これを取り消すことができるものとする。

(四)  審判の取消し

(1)  (一)本文に定める原因が止んだときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求によって、保佐開始の審判を取り消さなければならないものとする。

(2)  家庭裁判所は、(1)に掲げる者の請求によって、(三)(2)の審判の全部又は一部を取り消すことができるものとする。

3  補助開始の審判

補助類型(新設)
精神上の障害(痴呆・知的障害・精神障害・自閉症等)により判断能力(事理弁識能力)が不十分な者のうち,後記A又はBの程度に至らない軽度の状態にある者を対象とする。
 家庭裁判所の「補助開始の審判」とともに「被補助人」のために「補助人」を選任し,当事者が申立てにより選択した「特定の法律行為」について,審判により補助人に代理権又は同意権・取消権の一方又は双方を付与する。
 自己決定の尊重の観点から,本人の申立て又は同意を審判の要件とする。
 なお,代理権・同意権の必要性がなくなれば,その付与の取消しを求めることができ,すべての代理権・同意権の付与が取り消されれれば,補助開始の審判も取りされる。
(平成11年1月法務省民事局「民法の一部を改正する法律案等要綱案」の概要より)

(一)  審判の要件

(1)  精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求によって、補助開始の審判をすることができるものとする。ただし、1(一)又は2(一)本文に定める原因がある者については、この限りでないものとする。

(2)  本人以外の者の請求によって補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならないものとする。

(3)  補助開始の審判は、(三)(1)の審判又は二3(四)(1)の審判とともにこれをしなければならないものとする。

(二)  被補助人及び補助人

補助開始の審判を受けた者は、被補助人としてこれに補助人を付すものとする。

(三)  同意権付与の審判

(1)  家庭裁判所は、(一)(1)本文に掲げる者又は補助人若しくは補助監督人の請求によって、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができるものとする。ただし、その同意を得なければならない行為については、2(三)(1)に定める行為の一部に限るものとする。

(2)  本人以外の者の請求によって(1)の審判をするには、本人の同意がなければならないものとする。

(3)  補助人の同意を得なければならない行為について補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求によって、補助人の同意に代わる許可を与えることができるものとする。

(4)  補助人の同意を得なければならない行為でその同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、これを取り消すことができるものとする。

(四)  審判の取消し

(1)  (一)(1)本文に定める原因が止んだときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求によって、補助開始の審判を取り消さなければならないものとする。

(2)  家庭裁判所は、(1)に掲げる者の請求によって、(三)(1)の審判の全部又は一部を取り消すことができるものとする。

(3)  (三)(1)の審判及び二3(四)(1)の審判をすべて取り消す場合においては、家庭裁判所は、補助開始の審判を取り消さなければならないものとする。

4  開始の審判相互の調整

(一)   後見開始の審判をする場合において本人が被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐又は補助の開始の審判を取り消さなければならないものとする。

(二)  (一)は、保佐開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被補助人であるとき又は補助開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被保佐人であるときについて準用するものとする。

5  取消権者

能力の制限によって取り消し得べき行為は、制限能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び3(三)(1)の審判を受けた被補助人をいう。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、これを取り消すことができるものとする。

二  後見制度及び保佐制度の改正

1  後見

(一)  後見の開始

後見開始の審判があったときは、後見が開始するものとする。

(二)  成年後見人

(1)  配偶者法定後見人制度の廃止
民法第八百四十条(配偶者法定後見人)の規定は、削除するものとする。

配偶者法定後見人制度の廃止
配偶者が当然に後見人・保佐人となる旨を定める現行規定を削除し,家庭裁判所が個々の事案に応じて適任者を成年後見人・保佐人・補助人(以下「成年後見人等」という。)に選任することができるようにする。
(平成11年1月法務省民事局 「民法の一部を改正する法律案等要綱案」の概要より)

(2)  成年後見人の人数制限の廃止
成年後見人の人数には制限を設けないものとする。

複数成年後見人制度の導入及び法人成年後見人制度の明文化
a  複数の成年後見人等を選任することができるようにするため,後見人の人数を一人に制限する現行規定の対象を未成年後見人に限定し,成年後見人等が数人ある場合の権限の調整規定を設ける。
b  後記ウの規定中に成年後見人等となる者が法人である場合の考慮事情を掲げることにより,法人を成年後見人等に選任することができることを法文上明らかにする
(平成11年1月法務省民事局 「民法の一部を改正する法律案等要綱案」の概要より)

(3)  成年後見人の選任
ア  家庭裁判所は、後見開始の審判をするときは、職権で、成年後見人を選任するものとする。

イ  成年後見人が欠けたときは、家庭裁判所は、成年被後見人若しくはその親族その他の利害関係人の請求によって、又は職権で、成年後見人を選任するものとする。

ウ  成年後見人が選任されている場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、イに掲げる者若しくは成年後見人の請求によって、又は職権で、更に成年後見人を選任することができるものとする。

エ  成年後見人を選任するには、成年被後見人の心身の状態並びに生活及び財産の状況、成年後見人となる者の職業及び経歴並びに成年被後見人との利害関係の有無(成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と成年被後見人との利害関係の有無)、成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならないものとする。

ウ  成年後見人等の選任の考慮事情の明文化
本人との利益相反のおそれのない信頼性の高い個人又は法人が成年後見人等に選任されることを手続的に担保するため,成年後見人等の選任に当たって家庭裁判所が考慮すべき事情として,「成年後見人等となる者の─本人との利害関係の有無(成年後見人等となる者が法人であるときは,その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と本人との利害関係の有無)」,「本人の意見」等の事情を法文上明示的に列挙する。
(平成11年1月法務省民事局 「民法の一部を改正する法律案等要綱案」の概要より)

(4)  成年後見人の解任
成年後見人の解任の請求権者に成年被後見人を加えるものとする。

(5)  成年後見人の欠格事由
民法第八百四十六条第二号(禁治産者及び準禁治産者に関する欠格事由)の規定は、削除するものとする。

(三)  成年後見監督人

(

1)  成年後見監督人の選任
家庭裁判所は、必要があると認めるときは、成年被後見人、その親族若しくは成年後見人の請求によって、又は職権で、成年後見監督人を選任することができるものとする。

(2)  成年後見人に関する規定の準用
民法第六百四十四条、第六百五十四条、第六百五十五条、第八百四十四条から第八百四十六条まで及び第八百六十二条の規定並びに(二)(3)エ、(4)及び(5)及び(四)(2)から(4)までは、成年後見監督人について準用するものとする。

監督体制の充実
後見類型の成年後見監督人に加えて,保佐監督人・補助監督人の制度を新設するとともに,成年後見人等を選任する場合と同様の考慮事情(前記ウ)を規定することにより,法人を成年後見監督人・保佐監督人・補助監督人(以下「成年後見監督人等」という。)に選任することができることを法文上明らかにするなど,所要の規定の整備を行う。
(平成11年1月法務省民事局 「民法の一部を改正する法律案等要綱案」の概要より)

(四)  後見の事務

(1)  身上配慮義務及び本人の意思の尊重 

ア  成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならないものとする。

イ  民法第八百五十八条第二項(精神病院への入院等についての許可)の規定は、削除するものとする。

エ  身上配慮義務及び本人の意思の尊重等
自己決定の尊重及び身上監護の重要性を考慮して,現行民法第858条の規定に代えて,成年後見人等は,その事務を行うに当たっては,本人の意思を尊重し,かつ,本人の身上に配慮しなければならない旨の一般的な規定を創設する。
 また,身上監護に関する個別的規定として,成年後見人等による本人の居住用不動産の処分について,家庭裁判所の許可を要する旨の規定を新設する。
(平成11年1月法務省民事局 「民法の一部を改正する法律案等要綱案」の概要より)

(2)  複数の成年後見人の権限行使

ア  成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、数人の成年後見人が共同して、又は事務を分掌して、その権限を行使すべきことを定めることができるものとする。

イ  家庭裁判所は、職権で、アによる定めを取り消すことができるものとする。

ウ  成年後見人が数人あるときは、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りるものとする。

(3)  居住用不動産の処分についての許可

成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならないものとする。

(4)  後見の事務に要する費用

成年後見人が後見の事務を行うために必要な費用は、成年被後見人の財産の中から支弁するものとする。

(5)  後見の事務についての必要な処分

後見の事務についての必要な処分の請求権者に成年被後見人を加えるものとする。

2  保佐

(一)  保佐の開始

保佐は、保佐開始の審判によって開始するものとする。

(二)  保佐人及び臨時保佐人

(1)  保佐人の選任
家庭裁判所は、保佐開始の審判をするときは、職権で、保佐人を選任するものとする。

(2)  成年後見人に関する規定の準用
民法第八百四十二条及び第八百四十四条から第八百四十六条までの規定並びに1の(二)(3)イからエまで、(4)及び(5)は、保佐人について準用するものとする。

(3)  臨時保佐人の選任
保佐人又はその代表する者と被保佐人との利益が相反する行為については、保佐人は、臨時保佐人の選任を家庭裁判所に請求しなければならないものとする。ただし、保佐監督人がある場合は、この限りでないものとする。

(三)  保佐監督人

(1)  保佐監督人の選任
家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被保佐人、その親族若しくは保佐人の請求によって、又は職権で、保佐監督人を選任することができるものとする。
(2)  成年後見監督人に関する規定の準用
民法第六百四十四条、第六百五十四条、第六百五十五条、第八百四十四条から第八百四十六条まで、第八百五十条、第八百五十一条及び第八百六十二条の規定並びに1の(二)(3)エ、(4)及び(5)及び(四)(2)から(4)までは、保佐監督人について準用するものとする。この場合において、同法第八百五十一条第四号中「被後見人を代表する」とあるのは、「被保佐人を代表し、又は被保佐人がこれをすることに同意する」と読み替えるものとする。

(四)  代理権付与の審判

(1)  家庭裁判所は、一2(一)本文に掲げる者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができるものとする。

(2)  本人以外の者の請求によって(1)の審判をするには、本人の同意がなければならないものとする。

(3)  家庭裁判所は、(1)に掲げる者の請求によって、(1)の審判の全部又は一部を取り消すことができるものとする。

(五)  保佐の事務等

(1)  身上配慮義務及び本人の意思の尊重
保佐人は、保佐の事務を行うに当たっては、被保佐人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならないものとする。

(2)  後見の事務に関する規定の準用
民法第六百四十四条、第八百六十二条及び第八百六十三条の規定並びに1(四)(2)から(5)までは保佐の事務について、第八百二十四条ただし書の規定は保佐人が被保佐人を代表する場合について準用するものとする

(3)  後見の終了に関する規定の準用
民法第六百五十四条、第六百五十五条、第八百七十条、第八百七十一条及び第八百七十三条の規定は保佐人の任務が終了した場合について、同法第八百三十二条の規定は保佐人又は保佐監督人と被保佐人との間において保佐に関して生じた債権について準用するものとする。

3  補助 

(一)  補助の開始

補助は、補助開始の審判によって開始するものとする。

(二)  補助人及び臨時補助人

(1)  補助人の選任
家庭裁判所は、補助開始の審判をするときは、職権で、補助人を選任するものとする。

(2)  成年後見人に関する規定の準用
民法第八百四十二条及び第八百四十四条から第八百四十六条までの規定並びに1の(二)(3)イからエまで、(4)及び(5)は、補助人について準用するものとする。

(3)  臨時補助人の選任
補助人又はその代表する者と被補助人との利益が相反する行為については、補助人は、臨時補助人の選任を家庭裁判所に請求しなければならないものとする。ただし、補助監督人がある場合は、この限りでないものとする。

(三)  補助監督人

(1)  補助監督人の選任
家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被補助人、その親族若しくは補助人の請求によって、又は職権で、補助監督人を選任することができるものとする。

(2)  成年後見監督人に関する規定の準用
民法第六百四十四条、第六百五十四条、第六百五十五条、第八百四十四条から第八百四十六条まで、第八百五十条、第八百五十一条及び第八百六十二条の規定並びに1の(二)(3)エ、(4)及び(5)及び(四)(2)から(4)までは、補助監督人について準用するものとする。この場合において、同法第八百五十一条第四号中「被後見人を代表する」とあるのは、「被補助人を代表し、又は被補助人がこれをすることに同意する」と読み替えるものとする。

(四)  代理権付与の審判

(1)  家庭裁判所は、一3(一)(1)本文に掲げる者又は補助人若しくは補助監督人の請求によって、被補助人のために特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができるものとする。

(2)  2(四)(2)及び(3)は、(1)の審判について準用するものとする。

(五)  補助の事務等

(1)  身上配慮義務及び本人の意思の尊重
2(五)(1)は、補助の事務について準用するものとする。

(2)  後見の事務に関する規定の準用
民法第六百四十四条、第八百六十二条及び第八百六十三条の規定並びに1(四)(2)から(5)までは補助の事務について、第八百二十四条ただし書の規定は補助人が被補助人を代表する場合について準用するものとする。

(3)  後見の終了に関する規定の準用
民法第六百五十四条、第六百五十五条、第八百七十条、第八百七十一条及び第八百七十三条の規定は補助人の任務が終了した場合について、同法第八百三十二条の規定は補助人又は補助監督人と被補助人との間において補助に関して生じた債権について準用するものとする。

 

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三  公正証書遺言等の方式の改正

U 公正証書遺言等の方式の改正について
1  現行の公正証書遺言の方式
   現行民法は,公正証書遺言の方式について,「口授」,「口述」及び「読み聞かせ」を必須の要件としており(第969条),かつ,秘密証書遺言のような例外規定(第972条)を設けていないため,現行民法の解釈としては,手話通訳又は筆談によることはできず,聴覚・言語機能障害者は公正証書遺言をすることができないものとされている。このように,現行民法は,フランス民法と同様,遺言意思の真正及び正確性の担保の観点から,遺言の方式について特に厳格な口頭主義を採用している。
2  民法改正の必要性
   聴覚・言語機能障害者についても,手話の発達した状況等にかんがみ,近年,公証人の関与による遺言の適法性の担保,公証人役場における証書の保管(滅失・改ざんの防止),家庭裁判所の検認の省略等のメリットを有する公正証書遺言を利用することができるようにすべきであるという社会的要請が高まりを見せている。
 そこで,法務省は,平成10年1月,聴覚・言語機能障害者が手話通訳又は筆談により公正証書遺言をする途を開くための民法改正法案を平成11年の通常国会に提出する方針を公表した。これを受けて,法制審議会民法部会は,身分法小委員会における,手話通訳をめぐる現在の状況,公正証書遺言に関する諸外国の法制等に関する調査研究の結果及び関係団体等のヒアリングの結果を踏まえて,民法改正についての審議・検討を行い,平成11年1月26日,改正要綱案を取りまとめた。今後は,法制審議会総会における改正要綱の決定・答申を得た上で,今通常国会に成年後見制度の改正のための民法改正法案等と一括の法案を提出する予定である。
(平成11年1月法務省民事局 「民法の一部を改正する法律案等要綱案」の概要より)


1  公正証書遺言の方式の改正


(一)  第九百六十九条第三号中「読み聞かせ」を「読み聞かせ、又は閲覧させ」に改めるものとする。

(二)

(1)  口がきけない者が公正証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、第九百六十九条第二号の口授に代えなければならないものとする。この場合における同条第三号の規定の適用については、同号中「口述」とあるのは、「通訳人の通訳による申述」又は「自書」とするものとする。

(2)  第九百六十九条の遺言者又は証人が耳が聞こえない者である場合には、公証人は、同条第三号に規定する筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝えて、同号の読み聞かせに代えることができるものとする。

(3)  公証人は、(1)又は(2)に定める方式に従って公正証書を作ったときは、その旨をその証書に付記しなければならないものとする。

1  公正証書遺言の方式の改正
民法第969条の改正及びその特則規定の新設により,聴覚・言語機能障害者が次の方法により公正証書遺言をすることを可能にする。
a  聴覚・言語機能障害者は,「口授」に代えて,「通訳人の通訳(手話通訳等)による申述」又は「自書」(筆談)により,遺言の趣旨を公証人に伝える。
b  公証人は,「読み聞かせ」に代えて,「通訳人の通訳」又は「閲覧」により,筆記した内容の正確性について確認をする。
(注) 公正証書遺言一般について,「読み聞かせ」と「閲覧」の選択を可能にする。


2  秘密証書遺言の方式の改正


(一)  口がきけない者が秘密証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、その証書は自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を通訳人の通訳により申述し、又は封紙に自書して、第九百七十条第一項第三号の申述に代えなければならないものとする。

(二)  (一)の場合において、遺言者が通訳人の通訳により申述したときは、公証人は、その旨を封紙に記載しなければならないものとする。

(三)  (一)の場合において、遺言者が封紙に自書したときは、公証人は、その旨を封紙に記載して、第九百七十条第一項第四号に規定する申述の記載に代えなければならないものとする。

3  死亡危急者遺言の方式の改正

(一)  第九百七十六条第一項中「読み聞かせ」を「読み聞かせ、又は閲覧させ」に改めるものとする。

(二)  口がきけない者が第九百七十六条第一項の規定によって遺言をする場合には、遺言者は、証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述して、同条項の口授に代えなければならないものとする。

(三)  第九百七十六条第一項後段の遺言者又は他の証人が耳が聞こえない者である場合には、遺言の趣旨の口授又は申述を受けた者は、同項後段に規定する筆記した内容を通訳人の通訳によりその遺言者又は他の証人に伝えて、同項後段の読み聞かせに代えることができるものとする。

4  船舶遭難者遺言の方式の改正


口がきけない者が第九百七十九条第一項の規定によって遺言をする場合には、遺言者は、通訳人の通訳によりこれをしなければならないものとする。

2秘密証書遺言,死亡危急者遺言及び船舶遭難者遺言の方式の改正

上記1の改正に伴い,口頭主義を原則とする秘密証書遺言,死亡危急者遺言及び船舶遭難者遺言についても,聴覚・言語機能障害者が「通訳人の通訳」(手話通訳等)によりこれらの方式の遺言をすることを可能にするため,民法第972条,第96条及び第979条の各規定に所要の改正を加える。(平成11年1月法務省民事局 「民法の一部を改正する法律案等要綱案」の概要より)

四  その他

一から三までの改正に伴い、民法その他の法令中の関係規定に所要の整備を加えるものとする。



 

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第二  任意後見契約に関する法律案(仮称)


   公的機関の監督を伴う任意代理制度として、次のとおりの任意後見制度を創設するものとする。

特別法の制定により,次のとおりの任意後見制度(公的機関の監督を伴う任意代理制度)を創設する(以下,補助,保佐及び後見を「法定後見」という。)。(平成11年1月法務省民事局 「民法の一部を改正する法律案等要綱案」の概要より)


一  趣旨

この法律は、任意後見契約の方式、効力等に関し特別の定めをするとともに、任意後見人に対する監督に関し必要な事項を定めるものとする。

二  定義

この法律において、次の1から4までの各項に掲げる用語の意義は、当該各項の定めるところによるものとする。

1  任意後見契約 委任者が、受任者に対し、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部又は一部を委託し、その委託に係る事務について代理権を付与する委任契約であって、四1により任意後見監督人が選任された時からその効力を生ずる旨の定めのあるものをいうものとする。

2  本人 任意後見契約の委任者をいうものとする。

3  任意後見受任者 四1により任意後見監督人が選任される前における任意後見契約の受任者をいうものとする。

4  任意後見人 四1により任意後見監督人が選任された後における任意後見契約の受任者をいうものとする。

三  任意後見契約の方式

任意後見契約は、法務省令で定める様式の公正証書によってしなければならないものとする。

ア  任意後見契約の締結・方式
本人は,自ら選んだ任意後見人に対し,精神上の障害により判断能力が不十分な状況における自己の生活,療養看護及び財産管理に関する事務の全部又は一部について代理権を付与する委任契約を締結し,家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から契約の効力が発生する旨の特約を付すことにより,任意後見契約を締結することができる(任意後見監督人の選任前の受任者を「任意後見受任者」という。)。
 任意後見契約は,公証人の関与により適法かつ有効な契約の締結を担保する等の観点から,公証人の作成する公正証書によることを要する。
(平成11年1月法務省民事局 「民法の一部を改正する法律案等要綱案」の概要より)

四  任意後見監督人の選任

1  任意後見契約が登記されている場合において、精神上の障害により本人の事理を弁識する能力が不十分な状況にあるときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族又は任意後見受任者の請求により、任意後見監督人を選任するものとする。ただし、次に掲げる場合は、この限りでないものとする。
(一)  本人が未成年者であるとき。
(二)  本人が成年被後見人、被保佐人又は被補助人である場合において、当該本人に係る後見、保佐又は補助を継続することが本人の利益のため特に必要であると認めるとき。
(三)  任意後見受任者が次に掲げる者であるとき。
  (1)  民法第八百四十六条各号(第五号を除く。)に掲げる者
  (2)  本人に対して訴訟をし、又はした者及びその配偶者並びに直系血族
  (3)  不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者

2  1により任意後見監督人を選任する場合において、本人が成年被後見人、被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、当該本人に係る後見、保佐又は補助の開始の審判を取り消さなければならないものとする。

3  1により本人以外の者の請求により任意後見監督人を選任するには、本人の同意がなければならないものとする。ただし、本人がその意思を表示することができないときは、この限りでないものとする。

4  任意後見監督人が欠けた場合には、家庭裁判所は、本人、その親族若しくは任意後見人の請求により、又は職権で、任意後見監督人を選任するものとする。

5  任意後見監督人が選任されている場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項に掲げる者の請求により、又は職権で、更に任意後見監督人を選任することができるものとする。

イ  家庭裁判所による任意後見監督人の選任
任意後見契約が登記されている場合において,精神上の障害により本人の判断能力が不十分な状況にあるときは,任意後見受任者に不適任な事由がある場合等を除き,家庭裁判所は,本人,配偶者,四親等内の親族又は任意後見受任者の申立てにより,任意後見監督人を選任する。
 自己決定の尊重の観点から,任意後見監督人の選任は,本人がその意思を表示することができない場合を除き,本人の申立て又は同意を要件とする。
(平成11年1月法務省民事局 「民法の一部を改正する法律案等要綱案」の概要より)

五  本人の意思の尊重等

任意後見人は、二1に規定する委託に係る事務(以下「任意後見人の事務」という。)を行うに当たっては、本人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならないものとする。

六  任意後見監督人の職務等

1  任意後見監督人の職務は、次のとおりとするものとする。
(一)  任意後見人の事務を監督すること。
(二)  任意後見人の事務に関し、家庭裁判所に定期的に報告をすること。
(三)  急迫の事情がある場合に、任意後見人の代理権の範囲内において、必要な処分をすること。
(四)  任意後見人又はその代表する者と本人との利益が相反する行為について本人を代表すること。

2  任意後見監督人は、いつでも、任意後見人に対し任意後見人の事務の報告を求め、又は任意後見人の事務若しくは本人の財産の状況を調査することができるものとする。

3  家庭裁判所は、必要があると認めるときは、任意後見監督人に対し、任意後見人の事務に関する報告を求め、任意後見人の事務若しくは本人の財産の状況の調査を命じ、又は任意後見監督人の職務についてその他の必要な処分を命ずることができるものとする。

4  民法第六百四十四条、第六百五十四条、第六百五十五条、第八百四十四条から第八百四十六条まで、第八百五十条及び第八百六十二条の規定並びに第一、二1の(二)(3)エ及び(四)(2)及び(4)は、任意後見監督人について準用するものとする。


七  任意後見人の解任

任意後見人に不正な行為、著しい不行跡その他その任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、任意後見監督人、本人、その親族又は検察官の請求により、任意後見人を解任することができるものとする。

ウ  任意後見監督人の職務等及び任意後見人の解任

@  任意後見監督人は,任意後見人の事務を監督し,その事務に関し家庭裁判所に定期的に報告をすること等を職務とする。
A  家庭裁判所は,必要があると認めるときは,任意後見監督人に対し,必要な処分を命ずることができる。
B  任意後見人に不正な行為,著しい不行跡その他その任務に適しない事由があるときは,家庭裁判所は,任意後見監督人,本人,その親族又は検察官の請求により,任意後見人を解任することができる。
(平成11年1月法務省民事局 「民法の一部を改正する法律案等要綱案」の概要より)

八  任意後見契約の解除

1  四1により任意後見監督人が選任される前においては、本人又は任意後見受任者は、いつでも、公証人の認証を受けた書面によって、任意後見契約を解除することができるものとする。
2  四1により任意後見監督人が選任された後においては、本人又は任意後見人は、正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て、任意後見契約を解除することができるものとする。

九  後見、保佐及び補助との関係

1  任意後見契約が登記されている場合には、家庭裁判所は、本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り、後見、保佐又は補助の開始の審判をすることができるものとする。

2  1の場合における後見、保佐又は補助の開始の請求は、任意後見受任者、任意後見人又は任意後見監督人もすることができるものとする。

3  四1により任意後見監督人が選任された後において本人が後見、保佐又は補助の開始の審判を受けたときは、任意後見契約は終了するものとする。

エ  法定後見との関係の調整
任意後見契約が登記されている場合には,家庭裁判所は,本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り,法定後見開始の審判をすることができる。
 その開始の申立ては,法定後見開始の申立権者のほか,任意後見受任者,任意後見人又は任意後見監督人もすることができる。
 法定後見の開始の審判がされたときは,任意後見契約は終了する。


十  任意後見人の代理権の消滅の対抗要件

任意後見人の代理権の消滅は、登記をしなければ、善意の第三者に対抗することができないものとする。


十一  家事審判法の適用

家事審判法の適用に関しては、四1、4及び5による任意後見監督人の選任、四2による後見、保佐又は補助の開始の審判の取消し、六3による任意後見監督人の職務に関する処分、六4において準用する民法第八百四十四条、第八百四十五条及び第八百六十二条の規定並びに第一、二1(四)(2)のア及びイによる任意後見監督人の辞任についての許可、任意後見監督人の解任、任意後見監督人が数人ある場合におけるその権限行使についての定め及びその取消し並びに任意後見監督人に対する報酬の付与、七による任意後見人の解任並びに八2による任意後見契約の解除についての許可は、家事審判法第九条第一項甲類に掲げる事項とみなすものとする。


十二  最高裁判所規則

この法律に定めるもののほか、任意後見契約に関する審判の手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定めるものとする。

3  任意後見契約に関する法律案(仮称)(第二)の概要


   
   
   


 

第三  後見登記等に関する法律案(仮称)


民法の禁治産及び準禁治産の制度を後見、保佐及び補助(以下「後見等」という。)の制度に改め、新たに任意後見制度を創設することに伴い、禁治産及び準禁治産の宣告を戸籍に記載する現行の公示方法に代え、次のとおりの新たな登記制度を創設するものとする。

4  後見登記等に関する法律案(仮称)(第三)の概要
戸籍への記載に代えて,法定後見及び任意後見契約に関する新しい登録制度として,成年後見登記制度(仮称)を創設し,原則として裁判所書記官又は公証人の嘱託により,登記所に備える登記ファイルに法定後見及び任意後見契約についての所要の登記事項を記録するとともに,代理権等の公示の要請とプライバシー保護の要請との調和の観点から,本人,成年後見人等,成年後見監督人等,任意後見受任者,任意後見人,任意後見監督人その他一定の者に請求権者を限定した上で登記事項証明書を交付するものとする。

一  登記所

後見等及び任意後見契約についての登記に関する事務は、法務大臣の指定する法務局若しくは地方法務局又はその支局若しくは出張所が、登記所としてつかさどるものとする。


二  登記官

登記所における事務は、指定法務局等に勤務する法務事務官で、法務局又は地方法務局の長が指定した者が、登記官として取り扱うものとする。

三  後見等の登記、任意後見契約の登記等

1  後見等の登記は、裁判所書記官の嘱託又は後見登記等ファイルの記録(以下「登記記録」という。)に記録されている者等の申請により、後見等の種別、開始の審判をした裁判所、開始の審判の確定年月日、成年被後見人、被保佐人及び被補助人(以下「成年被後見人等」という。)の氏名、出生の年月日、住所及び本籍、成年後見人、保佐人及び補助人(以下「成年後見人等」という。)の氏名及び住所(法人にあっては、名称又は商号及び主たる事務所又は本店)、保佐人又は補助人の同意を要する行為又は代理権の範囲、成年後見人等が数人ある場合におけるその権限行使についての定め、成年後見監督人、保佐監督人及び補助監督人(以下「成年後見監督人等」という。)の氏名及び住所(法人にあっては、名称又は商号及び主たる事務所又は本店)等の所要の事項を磁気ディスクをもって調製する後見登記等ファイルに記録することによって行うものとする。

2  任意後見契約の登記は、公証人若しくは裁判所書記官の嘱託又は登記記録に記録されている者等の申請により、任意後見契約に係る公正証書の作成年月日、本人の氏名、出生の年月日、住所及び本籍、任意後見受任者又は任意後見人の氏名、住所(法人にあっては、名称又は商号及び主たる事務所又は本店)及び代理権の範囲、任意後見監督人の氏名、住所(法人にあっては、名称又は商号及び主たる事務所又は本店)及び選任の審判の確定年月日等の所要の事項を後見登記等ファイルに記録することによって行うものとする。

3  登記記録は、法令に別段の定めがある場合を除くほか、後見等の開始の審判又は任意後見契約ごとに編成するものとする。

4  登記官は、後見等又は任意後見契約について、終了の登記をしたときは、当該登記に係る登記記録を閉鎖し、これを磁気ディスクをもって調製する閉鎖登記ファイルに記録しなければならないものとする。


四  登記事項証明書等

1  成年被後見人等又はその配偶者、四親等内の親族、成年後見人等、成年後見監督人等、未成年後見人若しくは未成年後見監督人は、登記官に対し、当該成年被後見人等に係る後見等について、後見登記等ファイルに記録されている事項を証明した書面(以下「登記事項証明書」という。)の交付を請求することができるものとする。退任した成年後見人等若しくは成年後見監督人等又は成年被後見人等について任意後見契約が登記されている場合における任意後見受任者も、同様とするものとする。

2  任意後見契約に係る本人又はその配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人、成年後見人等、成年後見監督人等、未成年後見人若しくは未成年後見監督人は、登記官に対し、当該任意後見契約について、登記事項証明書の交付を請求することができるものとする。退任した任意後見受任者、任意後見人又は任意後見監督人も、同様とするものとする。

3  成年被後見人等であった者又はその成年後見人等若しくは成年後見監督人等であった者若しくは相続人その他の承継人は、登記官に対し、当該成年被後見人等であった者に係る後見等について、閉鎖登記ファイルに記録されている事項を証明した書面(以下「閉鎖登記事項証明書」という。)の交付を請求することができるものとする。

4  任意後見契約に係る本人であった者又はその任意後見受任者、任意後見人若しくは任意後見監督人であった者若しくは相続人その他の承継人は、登記官に対し、当該任意後見契約について、閉鎖登記事項証明書の交付を請求することができるものとする。

5  国又は地方公共団体の職員は、職務上必要とする場合には、登記官に対し、登記事項証明書又は閉鎖登記事項証明書の交付を請求することができるものとする。


五  手数料

登記の原因となった審判の申立人又は任意後見契約の公正証書の嘱託人、登記の申請をする者及び登記事項証明書又は閉鎖登記事項証明書の交付を請求する者は、政令で定める額の手数料を納めなければならないものとする。

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