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民法抜粋 (平成11年改正関連部分 原文はカタカナ

目次

総則 第1章 人   第2節 能 力

総則 第4章 法律行為 第3節 代理

総則 第4章 法律行為 第4節 無効及び取消

総則 第6章 時効     第1節 総則


債権 第1章 総則    第3節 多数当事者の債権 第4款 保証債務

債権 第2章 契約    第10節 委任

債権 第2章 契約    第12節 組合

債権 第5章 不法行為

親族 第2章 婚姻   第1節 婚姻の成立 第1款 婚姻の要件


親族 第3章 親子   第1節 実子

親族 第3章 親子  第2節 養子   第1款 縁組の要件

親族 第3章 親子  第2節 養子   第4款 離縁

親族 第5章 後見    第1節 後見の開始

親族 第5章 後見   第2節 後見の機関    第1款 後見人

親族 第5章 後見   第2節 後見の機関  第2款 後見監督人

親族 第5章 後見   第3節 後見の事務

親族 第5章 後見   第4節 後見の終了

親族 第5章の2 保佐及び補助  第1節 保佐

親族 第5章の2 保佐及び補助  第2節 補助

相続 第4章 相続の承認及び放棄  第1節 総則

相続 第7章 遺言           第1節 総則

相続 第7章 遺言   第2節 遺言の方式  第1款 普通の方式

相続 第7章 遺言   第2節 遺言の方式  第2款 特別の方式

相続 第7章 遺言 第4節 遺言の執行

総則 第1章 人   第2節 能 力

第3条〔成 年〕
満20年を以て成年とす

第4条〔未成年者の行為能力〕
未成年者が法律行為を為すには其法定代理人の同意を得ることを要す但単に権利を得又は義務を免るべき行為は此限に在らず
A前項の規定に反する行為は之を取消すことを得

第5条〔随意処分の許可〕
法定代理人が目的を定めて処分を許したる財産は其目的の範囲内に於て未成年者随意に之を処分することを得目的を定めすして処分を許したる財産を処分する亦同じ

第6条〔営業の許可〕
一種又は数種の営業を許されたる未成年者は其営業に関しては成年者と同一の能力を有す
A前項の場合に於て未成年者が未た其営業に堪へざる事跡あるときは其法定代理人は親族編の規定に従ひ其許可を取消し又は之を制限することを得

第7条〔後見開始の審判〕
精神上の障害に因り事理を弁識する能力を欠く常況に在る者に付ては家庭裁判所は本人,配偶者,4親等内の親族,未成年後見人,未成年後見監督人,保佐人,保佐監督人,補助人,補助監督人又は検察官の請求に因り後見開始の審判を為すことを得

第8条〔成年後見人〕
後見開始の審判を受けたる者は成年被後見人として之に成年後見人を付す

第9条〔成年被後見人の行為能力〕
成年被後見人の法律行為は之を取消すことを得但日用品の購入其他日常生活に関する行為に付いては此限に在らず

第10条〔後見開始の審判の取消〕
第7条に定めたる原因止みたるときは家庭裁判所は本人,配偶者,4親等内の親族,後見人(未成年後見人及び成年後見人を謂ふ以下同じ),後見監督人(未成年後見監督人及び成年後見監督人を謂ふ以下同じ),又は検察官の請求に因り後見開始の審判を取消すことを要す

第11条〔保佐開始の審判〕
精神上の障害に因り事理を弁識する能力が著しく不十分なる者に付ては家庭裁判所は本人,配偶者,4親等内の親族,後見人,後見監督人,補助人,補助監督人又は検察官の請求に因り保佐開始の審判を為すことを得
但第7条に定めたる原因ある者に付ては此限に在らず

第11条の2〔保佐人〕
保佐開始の審判を受けたる者は被保佐人として之に保佐人を付す

第12条〔被保佐人の行為能力〕
 被保佐人が左に掲げたる行為を為すには其保佐人の同意を得ることを要す但第9条但書に定めたる行為に付ては此限に在らず
1 元本を領収し又は之を利用すること
2 借財又は保証を為すこと
3 不動産其他重要なる財産に関する権利の得喪を目的とする行為を為すこと
4 訴訟行為を為すこと
5 贈与,和解又は仲裁契約を為すこと
6 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割を為すこと
7 贈与若くは遺贈を拒絶し又は負担付の贈与若くは遺贈を受諾すること
8 新築,改築,増築又は大修繕を為すこと
9 第602条に定めたる期間を超ゆる賃貸借を為すこと

A家庭裁判所は第11条本文に掲げたる者又は保佐人若くは保佐監督人の請求に因り被保佐人が前項に掲げざる行為を為すにも亦其保佐人の同意を得ることを要する旨の審判を為すことを得但第9条但書に定めたる行為に付ては此限に在らず
B保佐人の同意を得ることを要する行為にして其同意又は之に代はる許可を得ずして為したるものは之を取消すことを得
C保佐人の同意を得ることを要する行為に付き保佐人が被保佐人の利益を害する虞なきに拘らず同意を為さざるときは家庭裁判所は被保佐人の請求に因り保佐人の同意に代はる許可を与ふることを得

第13条〔保佐開始の審判の取消〕
第11条本文に定めたる原因止みたるときは家庭裁判所は本人,配偶者,4親等内の親族,未成年後見人,未成年後見監督人,保佐人,保佐監督人又は検察官の請求に因り保佐開始の審判を取消すことを要す
A家庭裁判所は前項に掲げたる者の請求に因り前条第2項の審判の全部又は一部を取消すことを得

第14条〔補助開始の審判〕
精神上の障害に因り事理を弁識する能力が不十分なる者に付ては家庭裁判所は本人,配偶者,4親等内の親族,後見人,後見監督人,保佐人,保佐監督人又は検察官の請求に因り補助開始の審判を為すことを得但第7条又は第11条本文に定めたる原因ある者に付ては此限に在らず
A本人以外の者の請求に因り補助開始の審判を為すには本人の同意あることを要す
B補助開始の審判は第16条第1項の審判又は第876条の9第1項の審判と共に之を為すことを要す

第15条〔補助人〕
補助開始の審判を受けたる者は被補助人として之に補助人を付す

第16条〔補助人の同意〕
家庭裁判所は第14条第1項本文に掲げたる者又は補助人若しくは補助監督人の請求に因り被補助人が特定の法律行為を為すには其補助人の同意を得ることを要する旨の審判を為すことを得但其同意を得ることを要する行為は第12条第1項に定めたる行為の一部に限る
A本人以外の者の請求に因り前項の審判を為すには本人の同意あることを要す
B補助人の同意を得ることを要する行為に付き補助人が被補助人の利益を害する虞なきに拘らず同意を為さざるときは家庭裁判所は被補助人の請求に因り補助人の同意に代はる許可を与ふることを得
C補助人の同意を得ることを要する行為にして其同意又は之に代はる許可を得ずして為したるものは之を取消すことを得

第17条〔補助開始の審判の取消〕
第14条第1項本文に定めたる原因止みたるときは家庭裁判所は本人,配偶者,4親等内の親族,未成年後見人,未成年後見監督人,補助人,補助監督人又は検察官の請求に因り補助開始の審判を取消すことを要す
A家庭裁判所は前項に掲げたる者の請求に因り前条第1項の審判の全部又は一部を取消すことを得
B前条第1項の審判及び第876条の9第1項の審判を総て取消す場合に於ては家庭裁判所は補助開始の審判を取消すことを要す

第18条〔後見開始の審判〕
後見開始の審判を為す場合に於て本人が被保佐人又は被補助人なるときは家庭裁判所は其本人に係る保佐開始又は補助開始の審判を取消すことを要す
A前項の規定は保佐開始の審判を為す場合に於て本人が成年被後見人若くは被補助人なるとき又は補助開始の審判を為す場合に於て本人が成年被後見人若くは被保佐人なるときに之を準用す

第19条〔制限能力者の相手方の催告権〕
制限能力者(未成年者,成年被後見人,被保佐人及び第16条第1項の審判を受けたる被補助人を謂う以下同じ)の相手方は其制限能力者が能力者と為りたる後之に対して1箇月以上の期間内に其取消し得べき行為を追認するや否やを確答すべき旨を催告することを得若し其制限能力者が其期間内に確答を発せざるときは其行為を追認したるものと看做す
A制限能力者が未た能力者とならざる時に於て其法定代理人,保佐人又は補助人に対し其権限内の行為に付き前項の催告を為すも其期間内に確答を発せざるとき亦同じ
B特別の方式を要する行為に付ては右の期間内に其方式を践みたる通知を発せざるときは之を取消したるものと看做す
C被保佐人又は第16条第1項の審判を受けたる被補助人に対しては第1項の期間内に其保佐人又は補助人追認を得べき旨を催告することを得若し其被保佐人又は被補助人が其期間内に右の追認を得たる通知を発せざるときは之を取消したるものと看做す

第20条〔制限能力者の詐術〕
 制限能力者が能力者たることを信ぜしむる為め詐術を用ひたるときは其行為を取消すことを得ず

(もどる)

総則 第4章 法律行為 第3節 代理

第99条〔代理行為の要件と効力〕
代理人が其権限内に於て本人の為めにすることを示して為したる意思表示は直接に本人に対して其効力を生ず
A前項の規定は第三者が代理人に対して為したる意思表示に之を準用す

第100条〔本人のためにすることを示さぬ意思表示〕
代理人が本人の為めにすることを示さすして為したる意思表示は自己の為めに之を為したるものと看做す但相手方が其本人の為めにすることを知り又は之を知ることを得へかりしときは前条第1項の規定を準用す

第101条〔代理行為の瑕疵〕
意思表示の効力が意思の欠缺,詐欺,強迫又は或事情を知りたること若くは之を知らざる過失ありたることに因りて影響を受くべき場合に於て其事実の有無は代理人に付き之を定む
A特定の法律行為を為すことを委託せられたる場合に於て代理人が本人の指図に従ひ其行為を為したるときは本人は其自ら知りたる事情に付き代理人の不知を主張することを得ず其過失に因りて知らさりし事情に付き亦同じ

第102条〔代理人の能力〕
代理人は能力者たることを要せず

第103条〔代理人の権限〕
権限の定なき代理人は左の行為のみを為す権限を有す
1保存行為
2代理の目的たる物又は権利の性質を変せざる範囲内に於て其利用又は改良を目的とする行為

第104条〔任意代理人の復任権〕
委任に因る代理人は本人の許諾を得たるとき又は已むことを得ざる事由あるときに非ざれば復代理人を選任することを得ず

第105条〔復代理人選任の責任〕
代理人が前条の場合に於て復代理人を選任したるときは選任及び監督に付き本人に対して其責に任す
A代理人が本人の指名に従ひて復代理人を選任したるときは其不適任又は不誠実なることを知りて之を本人に通知し又は之を解任することを怠りたるに非ざれば其責に任ぜず

第106条〔法定代理人の復任権〕
法定代理人は其責任を以て復代理人を選任することを得但已むことを得ざる事由ありたるときは前条第1項に定めたる責任のみを負ふ

第107条〔復代理人の権限〕
復代理人は其権限内の行為に付き本人を代表す
A復代理人は本人及び第三者に対して代理人と同一の権利義務を有す

第108条〔自己契約・双方代理の禁止〕
何人と雖も同一の法律行為に付き其相手方の代理人と為り又は当事者双方の代理人と為ることを得ず但債務の履行に付ては此限に在らず

第109条〔表見代理〕
第三者に対して他人に代理権を与へたる旨を表示したる者は其代理権の範囲内に於て其他人と第三者との間に為したる行為に付き其責に任す

第110条〔代理権踰越のとき〕
代理人が其権限外の行為を為したる場合に於て第三者が其権限ありと信すべき正当の理由を有せしときは前条の規定を準用す

第111条〔代理権の消滅事由〕
代理権は左の事由に因りて消滅す
1 本人の死亡
2 代理人の死亡若くは破産又は代理人が後見開始の審判を受けたること
A此他委任に因る代理権は委任の終了に因りて消滅す

第112条〔代理権消滅後の表見代理〕
代理権の消滅は之を以て善意の第三者に対抗することを得ず但第三者が過失に因りて其事実を知らさりしときは此限に在らず

第113条〔無権代理〕
代理権を有せざる者が他人の代理人として為したる契約は本人が其追認を為すに非ざれば之に対して其効力を生ぜず
A追認又は其拒絶は相手方に対して之を為すに非ざれば之を以て其相手方に対抗することを得ず但相手方が其事実を知りたるときは此限に在らず

第114条〔相手方の催告権〕
前条の場合に於て相手方は相当の期間を定め其期間内に追認を為すや否やを確答すべき旨を本人に催告することを得若し本人が其期間内に確答を為さざるときは追認を拒絶したるものと看做す

第115条〔相手方の取消権〕
代理権を有せざる者の為したる契約は本人の追認なき間は相手方に於て之を取消すことを得但契約の当時相手方が代理権なきことを知りたるときは此限に在らず

第116条〔無権代理行為の追認〕
追認は別段の意思表示なきときは契約の時に遡りて其効力を生ず但第三者の権利を害することを得ず

第117条〔無権代理人の責任〕
他人の代理人として契約を為したる者が其代理権を証明すること能はす且本人の追認を得さりしときは相手方の選択に従ひ之に対して履行又は損害賠償の責に任す
A前項の規定は相手方が代理権なきことを知りたるとき若くは過失に因りて之を知らさりしとき又は代理人として契約を為したる者が其能力を有せさりしときは之を適用せず

第118条〔単独行為の無権代理〕
単独行為に付ては其行為の当時相手方が代理人と称する者の代理権なくして之を為すことに同意し又は其代理権を争はさりしときに限り前5条の規定を準用す代理権を有せざる者に対し其同意を得て単独行為を為したるとき亦同じ

(もどる)

総則 第4章 法律行為 第4節 無効及び取消

第119条〔無効行為の追認〕
無効の行為は追認に因りて其効力を生ぜず但当事者が其無効なることを知りて追認を為したるときは新なる行為を為したるものと看做す

第120条〔取消権者〕
能力の制限に因りて取消し得べき行為は制限能力者又は其代理人,承継人若くは同意を為すことを得る者に限り之を取消すことを得
A詐欺又は強迫に因りて取消し得べき行為は瑕疵ある意思表示を為したる者又は其代理人若くは承継人に限り之を取消すことを得

第121条〔取消の効果〕
取消したる行為は初より無効なりしものと看做す但制限能力者は其行為に因りて現に利益を受くる限度に於て償還の義務を負ふ

第122条〔追認の効果〕
取消し得べき行為は第120条に掲げたる者が之を追認したるときは初より有効なりしものと看做す但第三者の権利を害することを得ず

第123条〔取消・追認の方法〕
取消し得べき行為の相手方が確定せる場合に於て其取消又は追認は相手方に対する意思表示に依りて之を為す

第124条〔追認の要件〕
追認は取消の原因たる情況の止みたる後之を為すに非ざれば其効なし
A成年被後見人が能力者と為りたる後其行為を了知したるときは其了知したる後に非ざれば追認を為すことを得ず
B前2項の規定は法定代理人又は制限能力者の保佐人若くは補助人が追認を為す場合には之を適用せず

第125条〔法定追認〕
前条の規定に依り追認を為すことを得る時より後取消し得べき行為に付き左の事実ありたるときは追認を為したるものと看做す但異議を留めたるときは此限に在らず
1 全部又は一部の履行
2 履行の請求
3 更 改
4 担保の供与
5 取消し得べき行為に因りて取得したる権利の全部又は一部の譲渡
6 強制執行

第126条〔取消権の短期消滅時効〕
取消権は追認を為すことを得る時より5年間之を行はざるときは時効に因りて消滅す行為の時より20年を経過したるとき亦同じ

(もどる)

総則 第6章 時効     第1節 総則

第158条〔制限能力者に対する時効の停止〕
時効の期間満了前6箇月内に於て未成年者又は成年被後見人が法定代理人を有せざりしときは其者が能力者と為り又は法定代理人が就職したる時より6箇月内は之に対して時効完成せず

第159条〔財産管理者に対する制限能力者の権利の時効の停止〕
未成年者又は成年被後見人が其財産を管理する父,母又は後見人に対して有する権利に付ては其者が能力者と為り又は後任の法定代理人が就職したる時より6箇月内は時効完成せず

債権 第1章 総則    第3節 多数当事者の債権 第4款 保証債務

第449条〔取り消しうべき債務の保証〕
能力の制限に因りて取消すことを得べき債務を保証したる者が保証契約の当時其取消の原因を知りたるときは主たる債務者の不履行又は其債務の取消の場合に付き同一の目的を有する独立の債務を負担したるものと推定す

債権 第2章 契約    第10節 委任

第653条〔委任の終了原因〕
委任は委任者又は受任者の死亡又は破産に因りて終了す受任者が後見開始の審判を受けたるとき亦同じ

債権 第2章 契約    第12節 組合

第679条〔非任意脱退〕
 前条に掲げたる場合の外組合員は左の事由に因りて脱退す
1 死 亡
2 破 産
3 後見開始の審判を受けたること
4 除 名

債権 第5章 不法行為

第713条〔心神喪失者の責任能力〕
精神上の障害に因り自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態に在る間に他人に損害を加へたる者は賠償の責に任ぜず但故意又は過失に因りて一時其状態を招きたるときは此限に在らず

(もどる)

親族 第2章 婚姻   第1節 婚姻の成立 第1款 婚姻の要件

第738条〔成年被後見人の婚姻〕
成年被後見人が婚姻をするには,その成年後見人の同意を要しない。

親族 第3章 親子   第1節 実子


第778条〔成年被後見人の否認権の出訴期間〕
夫が成年被後見人であるときは,前条の期間は,後見開始の審判の取消しがあった後夫が子の出生を知った時から,これを起算する。

第780条〔認知能力〕
認知をするには,父又は母が未成年者又は成年被後見人であるときでも,その法定代理人の同意を要しない。

親族 第3章 親子  第2節 養子   第1款 縁組の要件

第794条〔後見人・被後見人間の縁組〕
後見人が被後見人(未成年後見人及び成年被後見人をいう。以下同じ。)を養子とするには,家庭裁判所の許可を得なければならない。後見人の任務が終了した後,まだ管理の計算が終わらない間も,同様である。

親族 第3章 親子  第2節 養子   第4款 離縁


第811条〔協議上の離縁等〕
縁組の当事者は,その協議で,離縁をすることができる。
A養子が15歳未満であるときは,その離縁は,養親と養子の離縁後にその法定代理人となるべき者との協議でこれをする。
B前項の場合において,養子の父母が離婚しているときは,その協議で,その一方を養子の離縁後にその親権者となるべき者と定めなければならない。
C前項の協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,家庭裁判所は,前項の父若しくは母又は養親の請求によって,協議に代わる審判をすることができる。
D第2項の法定代理人となるべき者がないときは,家庭裁判所は,養子の親族その他の利害関係人の請求によって,養子の離縁後にその未成年後見人となるべき者を選任する。
E縁組の当事者の一方が死亡した後に生存当事者が離縁をしようとするときは,家庭裁判所の許可を得て,これをすることができる。

親族 第5章 後見    第1節 後見の開始

第838条〔後見開始の原因〕
後見は,次の掲げる場合に開始する。
1 未成年者に対して親権を行う者がないとき,又は親権を行う者が管理権を有しないとき。
2 後見開始の審判があったとき。

親族 第5章 後見   第2節 後見の機関    第1款 後見人

第839条〔未成年後見人の指定〕
未成年者に対して最後に親権を行う者は,遺言で,未成年後見人を指定することができる。ただし,管理権を有しない者は,この限りでない。
A親権を行う父母の一方が管理権を有しないときは,他の一方は,前項の規定によって未成年後見人の指定をすることができる。

第840条〔未成年後見人の選任〕
前条の規定によって未成年後見人となるべき者がいないときは,家庭裁判所は,未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によって,未成年後見人を選任する。未成年後見人が欠けたときも,同様である。

第841条〔未成年後見人の選任請求〕
父若しくは母が親権若しくは管理権を辞し,又は親権を失ったことによって未成年後見人を選任する必要が生じたときは,その父又は母は,遅滞なく未成年後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。

第842条〔未成年後見人の数〕
未成年後見人は,1人でなければならない。

第843条〔成年後見人の選任〕
家庭裁判所は,後見開始の審判をするときは,職権で,成年後見人を選任する。
A成年後見人が欠けたときは,家庭裁判所は,成年被後見人若しくはその親族その他の利害関係人の請求によって,又は職権で,成年後見人を選任する。
B成年後見人が選任されている場合においても,家庭裁判所は,必要があると認めるときは,前項に掲げる者若しくは成年後見人の請求によって,又は職権で,更に成年後見人を選任することができる。
C成年後見人を選任するには,成年被後見人の心身の状態並びに生活及び財産の状況,成年後見人となる者の職業及び経歴並びに成年被後見人との利害関係の有無(成年後見人となる者が法人であるときは,その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と成年被後見人との利害関係の有無),成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。

第844条〔後見人の辞任〕
後見人は,正当な事由があるときは,家庭裁判所の許可を得て,その任務を辞することができる。

第845条〔後見人の選任請求〕
後見人がその任務を辞したことによって新たに後見人を選任する必要が生じたときは,その後見人は,遅滞なく新たな後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。

第846条〔後見人の解任〕
後見人に不正な行為,著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは,家庭裁判所は,後見監督人,被後見人若しくはその親族若しくは検察官の請求によって,又は職権で,これを解任することができる。

第847条〔後見人の欠格事由〕
 左に掲げる者は,後見人となることができない。
1 未成年者
2 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人又は保佐人又は補助人
3 破産者
4 被後見人に対して訴訟をし,又はした者及びその配偶者並びに直系血族
5 行方の知れない者

(もどる)

親族 第5章 後見   第2節 後見の機関  第2款 後見監督人

第848条〔指定後見監督人〕
後見人を指定することができる者は,遺言で,後見監督人を指定することができる。

第849条〔選任後見監督人〕
前条の規定によって指定した未成年後見監督人がない場合において必要があると認めるときは,家庭裁判所は,未成年被後見人,その親族若しくは未成年後見人の請求によって,又は職権で,未成年後見監督人を選任することができる。未成年後見監督人の欠けた場合も,同様である。

第849条の2〔選任後見監督人〕
家庭裁判所は,必要があると認めるときは,成年被後見人,その親族若しくは成年後見人の請求によって,又は職権で,成年後見監督人を選任することができる。

第850条〔後見監督人の欠格事由〕
後見人の配偶者,直系血族及び兄弟姉妹は,後見監督人となることができない。

第851条〔後見監督人の職務〕
後見監督人の職務は,左の通りである。
1 後見人の事務を監督すること。
2 後見人が欠けた場合に,遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求すること。
3 急迫の事情がある場合に,必要な処分をすること。
4 後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること。

第852条〔注意義務・辞任・解任・欠格事由〕
第644条,第654条,第655条,第843条第4項,第844条,第846条,第847条,第859条の2,第859条の3,第861条第2項及び第862条の規定は,後見監督人について準用する。


親族 第5章 後見   第3節 後見の事務

第853条〔財産調査・財産目録調製〕
後見人は,遅滞なく被後見人の財産の調査に著手し,1箇月以内に,その調査を終わり,且つ,その目録を調製しなければならない。但し,この期間は,家庭裁判所において,これを伸長することができる。
A財産の調査及びその目録の調製は,後見監督人があるときは,その立会を以てこれをしなければ,その効力がない。

第854条〔目録調製前の権限〕
後見人は,目録の調製を終わるまでは,急迫の必要がある行為のみをする権限を有する。但し,これを善意の第三者に対抗することができない。

第855条〔被後見人に対する後見人の債権債務の申出〕
後見人が,被後見人に対し,債権を有し,又は債務を負う場合において,後見監督人があるときは,財産の調査に著手する前に,これを後見監督人に申し出なければならない。
A後見人が,被後見人に対し債権を有することを知ってこれを申し出ないときは,その債権を失う。

第856条〔被後見人が包括財産を取得した場合への準用〕
前3条の規定は,後見人が就職した後被後見人が包括財産を取得した場合にこれを準用する。

第857条〔未成年者の身上に関する権利義務〕
未成年後見人は,第820条から第823条まで〔子の監護・教育・居所指定・懲戒・職業許可〕に規定する事項について,親権を行う者と同一の権利義務を有する。ただし,親権を行う者が定めた教育の方法及び居所を変更し,未成年被後見人を懲戒場に入れ,営業を許可し,その許可を取り消し,又はこれを制限するには,未成年後見監督人があるときは,その同意を得なければならない。

第858条〔成年被後見人の療養看護〕
成年後見人は,成年被後見人の生活,療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては,成年被後見人の意思を尊重し,かつ,その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。

第859条〔財産管理と代理権〕
後見人は,被後見人の財産を管理し,又,その財産に関する法律行為について被後見人を代表する。
A第824条但書の規定は,前項の場合にこれを準用する。

第859条の2〔共同成年後見人〕
成年後見人が数人あるときは,家庭裁判所は,職権で,数人の成年後見人が,共同して又は事務を分掌して,その権限を行使すべきことを定めることができる。
A家庭裁判所は,職権で,前項の規定による定めを取り消すことができる。
B成年後見人が数人あるときは,第三者の意思表示は,その1人に対してすれば足りる。

第859条の3〔家庭裁判所の許可〕
成年後見人は,成年被後見人に代わって,その住居の用に供する建物又はその敷地について,売却,賃貸,賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには,家庭裁判所の許可を得なければならない。

第860条〔後見人と被後見人の利益相反行為〕
第826条の規定は,後見人にこれを準用する。但し,後見監督人がある場合は,この限りでない。

第861条〔支出金額の予定〕
後見人は,その就職の初において,被後見人の生活,教育又は療養看護及び財産の管理のために毎年費すべき金額を予定しなければならない。
A後見人が後見の事務を行うために必要な費用は,被後見人の財産の中から支弁する。

第862条〔後見人の報酬〕
家庭裁判所は,後見人及び被後見人の資力その他の事情によって,被後見人の財産の中から,相当な報酬を後見人に与えることができる。

第863条〔後見事務の監督〕
後見監督人又は家庭裁判所は,何時でも,後見人に対し後見の事務の報告若しくは財産の目録の提出を求め,又は後見の事務若しくは被後見人の財産の状況を調査することができる。
A家庭裁判所は,後見監督人,被後見人若しくはその親族その他の利害関係人の請求によって,又は職権で,被後見人の財産の管理その他後見の事務について必要な処分を命ずることができる。

第864条〔法定代理権および同意権の制限〕
後見人が,被後見人に代わって営業若しくは第12条第1項に掲げる行為をし,又は未成年被後見人がこれをすることに同意するには,後見監督人があるときは,その同意を得なければならない。ただし,元本の領収については,この限りでない。

第865条〔前条違反の効果〕
後見人が,前条の規定に違反してし,又は同意を与えた行為は,被後見人又は後見人において,これを取り消すことができる。この場合には,第19条の規定を準用する。
A前項の規定は,第121条乃至第126条〔取消の効果・追認〕の規定の適用を妨げない。

第866条〔被後見人からの財産等の譲受け〕
後見人が被後見人の財産又は被後見人に対する第三者の権利を譲り受けたときは,被後見人は,これを取り消すことができる。この場合には,第19条〔相手方の催告権〕の規定を準用する。
A前項の規定は,第121条乃至第126条〔取消の効果・追認〕の規定の適用を妨げない。

第867条〔親権の代行〕
未成年後見人は,未成年被後見人に代わって親権を行う。
A第853条乃至第857条及び第861条乃至前条の規定は,前項の場合にこれを準用する。

第868条〔財産に関する権限のみの後見人〕
親権を行う者が管理権を有しない場合には,未成年後見人は,財産に関する権限のみを有する。

第869条〔注意義務,管理権の制限〕
第644条及び第830条の規定は,後見にこれを準用する。

(もどる)

親族 第5章 後見   第4節 後見の終了

第870条〔管理の計算〕
後見人の任務が終了したときは,後見人又はその相続人は,2箇月以内にその管理の計算をしなければならない。但し,この期間は,家庭裁判所において,これを伸長することができる。

第871条〔後見監督人の立会い〕
後見の計算は,後見監督人があるときは,その立会を以てこれをする。

第872条〔未成年者・後見人間の契約の取消し〕
未成年被後見人が成年に達した後後見の計算の終了前に,その者と未成年後見人又はその相続人との間にした契約は,その者においてこれを取り消すことができる。その者が未成年後見人又はその相続人に対してした単独行為も,同様である。
A第19条及び第121条乃至第126条の規定は,前項の場合にこれを準用する。

第873条〔後見人および被後見人の利息支払義務〕
後見人が被後見人に返還すべき金額及び被後見人が後見人に返還すべき金額には,後見の計算が終了した時から,利息をつけなければならない。
A後見人が自己のために被後見人の金銭を消費したときは,その消費の時から,これに利息をつけなければならない。なお,損害があったときは,その賠償の責に任ずる。

第874条〔委任の規定の準用〕
第654条及び第655条の規定は,後見にこれを準用する。

第875条〔後見に関する債権の消滅時効〕
第832条に定める時効は,後見人又は後見監督人と被後見人との間において後見に関して生じた債権にこれを準用する。
A前項の時効は,第872条の規定によって法律行為を取り消した場合には,その取消の時から,これを起算する。


親族 第5章の2 保佐及び補助  第1節 保佐

第876条〔保佐開始の審判〕
保佐は,保佐開始の審判によって開始する。

第876条の2〔保佐人の選任〕
家庭裁判所は,保佐開始の審判をするときは,職権で,保佐人を選任する。
A第843条第2項から第4項まで及び第844条から第847条までの規定は,保佐人について準用する。
B保佐人又はその代表する者と被保佐人との利益が相反する行為については,保佐人は,臨時保佐人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。ただし,保佐監督人がある場合は,この限りでない。

第876条の3〔保佐監督人の選任〕
家庭裁判所は,必要がある認めるときは,被保佐人,その親族若しくは保佐人の請求によって,又は職権で,保佐監督人を選任することができる。
A第644条,第654条,第655条,第843条第4項,第844条,第846条,第847条,第850条,第851条,第859条の2,第859条の3,第861条第2項及び第862条の規定は,保佐監督人について準用する。この場合において,第851条第4号中「被後見人を代表する」とあるのは,「被保佐人を代表し,又は被保佐人がこれをすることに同意する」と読み替えるものとする。

第876条の4〔代理権の付与〕
家庭裁判所は,第11条本文に掲げる者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求によって,被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
A本人以外の者の請求によって前項の審判をするには,本人の同意がなければならない。
B家庭裁判所は,第1項に掲げる者の請求によって,同項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。

第876条の5〔保佐の事務〕
保佐人は,保佐の事務を行うに当たっては,被保佐人の意思を尊重し,かつ,その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。
A第644条,第859条の2,第859条の3,第861条第2項,第862条及び第863条の規定は,保佐の事務について,第824条ただし書の規定は保佐人が前条第1項の代理権を付与する旨の審判に基づき被保佐人を代表する場合について準用する。
B第654条,第655条,第870条,第871条及び第873条の規定は保佐人の任務が終了した場合について,第832条の規定は保佐人又は保佐監督人と被保佐人との間において保佐に関して生じた債権について準用する。

親族 第5章の2 保佐及び補助  第2節 補助

第876条の6〔補助開始の審判〕
補助は,補助開始の審判によって開始する。

第876条の7〔補助人の選任〕
家庭裁判所は,補助開始の審判をするときは,職権で,補助人を選任する。
A第843条第2項から第4項まで及び第844条から第847条までの規定は,補助人について準用する。
B補助人又はその代表する者と被補助人との利益が相反する行為については,補助人は,臨時補助人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。ただし,補助監督人がある場合は,この限りでない。

第876条の8〔補助監督人の選任〕
家庭裁判所は,必要があると認めるときは,被補助人,その親族若しくは補助人の請求によって,又は職権で,補助監督人を選任することができる。
A第644条,第654条,第655条,第843条第4項,第844条,第846条,第847条,第850条,第851条,第859条の2,第859条の3,第861条第2項及び第862条の規定は,補助監督人について準用する。この場合において,第851条第4号中「被後見人を代表する」とあるのは,「被補助人を代表し,又は被補助人がこれをすることに同意する」と読み替えるものとする。

第876条の9〔代理権の付与〕
家庭裁判所は,第14条第1項本文に掲げる者又は補助人若しくは補助監督人の請求によって,被補助人のために特定の行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
A第876条の4第2項及び第3項の規定は,前項の審判について準用する。

第876条の10〔代理権の付与〕
第644条,第859条の2,第859条の3,第861条第2項,第862条,第863条及び第876条の5の規定は,補助の事務について,第824条ただし書の規定は補助人が前条第1項の代理権を付与する旨の審判に基づき被補助人を代表する場合について準用する。
A第654条,第655条,第870条,第871条及び第873条の規定は補助人の任務が終了した場合について,第832条の規定は補助人又は補助監督人と被補助人との間において補助に関して生じた債権について準用する。

相続 第4章 相続の承認及び放棄  第1節 総則


第915条〔承認・放棄の期間〕

相続人は,自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に,単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。但し,この期間は,利害関係人又は検察官の請求によって,家庭裁判所において,これを伸長することができる。
A相続人は,承認又は放棄をする前に,相続財産の調査をすることができる。

第916条〔承認・放棄の期間〕
相続人が承認又は放棄をしないで死亡したときは,前条第1項の期間は,その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から,これを起算する。

第917条〔承認・放棄の期間〕
相続人が未成年者又は成年被後見人であるときは,第915条第1項の期間は,その法定代理人が無能力者のために相続の開始があったことを知った時から,これを起算する。

(もどる)

相続 第7章 遺言       第1節 総則

第960条〔遺言の要式性〕
遺言は,この法律に定める方式に従わなければ,これをすることができない。

第961条〔遺言能力〕
満15歳に達した者は,遺言をすることができる。

第962条〔制限能力者の遺言能力〕
第4条,第9条,第12条及び第16条の規定は,遺言には,これを適用しない。

第963条〔遺言能力を要する時期〕
遺言者は,遺言をする時においてその能力を有しなければならない。

第964条〔包括遺贈・特定遺贈〕
遺言者は,包括又は特定の名義で,その財産の全部又は一部を処分することができる。但し,遺留分に関する規定に違反することができない。

第965条〔受遺者の能力・欠格事由〕
第886条及び第891条の規定は,受遺者にこれを準用する。

第966条〔被後見人の遺言の制限〕
被後見人が,後見の計算の終了前に,後見人又はその配偶者若しくは直系卑属の利益となるべき遺言をしたときは,その遺言は,無効とする。
A前項の規定は,直系血族,配偶者又は兄弟姉妹が後見人である場合には,これを適用しない。

相続 第7章 遺言   第2節 遺言の方式  第1款 普通の方式

第967条〔普通方式の種類〕
遺言は,自筆証書,公正証書又は秘密証書によってこれをしなければならない。但し,特別の方式によることを許す場合は,この限りでない。

第968条〔自筆証書遺言〕
 自筆証書によって遺言をするには,遺言者が,その全文,日附及び氏名を自書し,これに印をおさなければならない。
A自筆証書中の加除その他の変更は,遺言者が,その場所を指示し,これを変更した旨を附記して特にこれに署名し,且つ,その変更の場所に印をおさなければ,その効力がない。

第969条〔公正証書遺言〕
 公正証書によって遺言をするには,次の方式に従わなければならない。
1 証人2人以上の立会いがあること。
2 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
3 公証人が,遺言者の口述を筆記し,これを遺言者及び証人に読み聞かせ,又は閲覧させること。
4 遺言者及び証人が,筆記の正確なことを承認した後,各自これに署名し,印を押すこと。ただし,遺言者が署名することができない場合は,公証人がその事由を付記して,署名に代えることができる。
5 公証人が,その証書は前4号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して,これに署名し,印を押すこと。

第969条の2〔公正証書遺言〕
口がきけない者が公正証書によって遺言をする場合には,遺言者は,公証人及び証人の前で,遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し,又は自書して,前条第2号の口授に代えなければならない。この場合における同条第3号の規定の適用については,同号中「口述」とあるのは,「通訳人の通訳による申述」又は「自書」とする。
A前条の遺言者又は証人が耳が聞こえない者である場合には,公証人は,同条第3号に規定する筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝えて,同号の読み聞かせに代えることができる。
B公証人は,前2項に定める方式に従って公正証書を作ったときは,その旨をその証書に付記しなければならない。

第970条〔秘密証書遺言〕
秘密証書によって遺言をするには,左の方式に従わなければならない。
1 遺言者が,その証書に署名し,印をおすこと。
2 遺言者が,その証書を封じ,証書に用いた印章を以てこれに封印すること。
3 遺言者が,公証人1人及び証人2人以上の前に封書を提出して,自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
4 公証人が,その証書を提出した日附及び遺言者の申述を封紙に記載した後,遺言者及び証人とともにこれに署名し,印をおすこと。
A第968条第2項〔自筆証書遺言の加除訂正〕の規定は,秘密証書による遺言にこれを準用する。

第971条〔秘密証書遺言の転換〕
秘密証書による遺言は,前条に定める方式に欠けるものがあっても,第968条の方式を具備しているときは,自筆証書による遺言としてその効力を有する。

第972条〔口が聞けない者の遺言〕
口がきけない者が秘密証書によって遺言をする場合には,遺言者は,公証人及び証人の前で,その証書は自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を通訳人の通訳により申述し,又は封紙に自書して,第970条第1項第3号の申述に代えなければならない。
A第1項の場合において,遺言者が封紙に自書したときは,公証人は,その旨を封紙に記載して,第970条第1項第4号の規定する申述の記載に代えなければならない。
B前項の場合において,遺言者が通訳人の通訳により申述したときは,公証人は,その旨を封紙に記載しなければならない。

第973条〔成年被後見人の遺言〕
成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには,医師2人以上の立会いがなければならない。
A遺言に立ち会った医師は,遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して,これに署名し,印を押さなければならない。ただし,秘密証書によって遺言をする場合には,その封紙に右の記載をし,署名し,印をおさなければならない。

第974条〔証人・立会人の欠格事由〕
次に掲げる者は,遺言の証人又は立会人となることができない。
1 未成年者
2 推定相続人,受遺者及びその配偶者並びに直系血族
3 公証人の配偶者,4親等内の親族,書記及び雇人

第975条〔共同遺言の禁止〕
遺言は,2人以上の者が同一の証書でこれをすることができない。

相続 第7章 遺言   第2節 遺言の方式  第2款 特別の方式

第976条〔死亡危急者の遺言〕
疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは,証人3人以上の立会いをもって,その1人に遺言の趣旨を口授して,これをすることができる。この場合には,その口授を受けた者が,これを筆記して,遺言者及び他の証人に読み聞かせ,又は閲覧させ,各証人がその筆記の正確なことを承認した後,これに署名し,印を押さなければならない。
A口がきけない者が前項の規定によって遺言をする場合には,遺言者は,証人の前で,遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述して,同項の口授に代えなければならない。
B第1項後段の遺言者又は他の証人が耳が聞こえない者である場合には,遺言の趣旨の口授又は申述を受けた者は,同項後段に規定する筆記した内容を通訳人の通訳によりその遺言者又は他の証人に伝えて,同項後段の読み聞かせに代えることができる。
C前3項の規定によってした遺言は,遺言の日から20日以内に,証人の1人又は利害関係人から家庭裁判所に請求してその確認を得なければ,その効力がない。
D家庭裁判所は,遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければ,これを確認することができない。

第977条〔伝染病隔離者の遺言〕
伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所に在る者は,警察官1人及び証人1人以上の立会を以て遺言書を作ることができる。

第978条〔在船者の遺言〕
船舶中に在る者は,船長又は事務員1人及び証人2人以上の立会を以て遺言書を作ることができる。

第979条〔船舶遭難者の遺言〕
船舶遭難の場合において,船舶中に在って死亡の危急に迫った者は,証人2人以上の立会を以て口頭で遺言をすることができる。
A口がきけない者が前項の規定によって遺言をする場合には,遺言者は,通訳人の通訳によりこれをしなければならない。
B前2項の規定に従ってした遺言は,証人が,その趣旨を筆記して,これに署名し,印を押し,かつ,証人の1人又は利害関係人から遅滞なく家庭裁判所に請求してその確認を得なければ,その効力がない。
C第976条第5項の規定は,前項の場合について準用する。

第980条〔遺言関係者の署名押印〕
第977条及び第978条の場合には,遺言者,筆者,立会人及び証人は,各自遺言書に署名し,印をおさなければならない。

第981条〔署名押印不能の場合〕
第977条乃至第979条の場合において,署名又は印をおすことのできない者があるときは,立会人又は証人は,その事由を附記しなければならない。

第982条〔普通方式遺言の規定の準用〕
第968条第2項〔遺言の加除訂正〕及び第973条乃至第975条〔禁治産者の遺言,証人または立会人の欠格事由,共同遺言の禁止〕の規定は,第976条乃至前条の規定による遺言にこれを準用する。

第983条〔遺言者の生存による特別方式遺言の失効〕
第976条乃至前条の規定によってした遺言は,遺言者が普通の方式によって遺言をすることができるようになった時から6箇月間生存するときは,その効力がない。

第984条〔在外日本人の遺言の特則
日本の領事の駐在する地に在る日本人が公正証書又は秘密証書によって遺言をしようとするときは,公証人の職務は,領事がこれを行う。

相続 第7章 遺言 第4節 遺言の執行


第1009条〔遺言執行者の欠格事由〕
未成年者及び破産者は,遺言執行者となることができない。

(もどる)

参考条文

第644条〔事務処理に関する善管義務〕
 受任者は委任の本旨に従ひ善良なる管理者の注意を以て委任事務を処理する義務を負ふ

第654条〔委任終了時の緊急処分義務〕
 委任終了の場合に於て急迫の事情あるときは受任者,其相続人又は法定代理人は委任者,其相続人又は法定代理人が委任事務を処理することを得るに至るまで必要なる処分を為すことを要す

第655条〔委任終了の対抗要件〕
 委任終了の事由は其委任者に出でたると受任者に出でたるとを問はず之を相手方に通知し又は相手方が之を知りたるときに非ざれば之を以て其相手方に対抗することを得ず

第830条〔第三者が子に与えた財産の管理〕
 無償で子に財産を与える第三者が,親権を行う父又は母にこれを管理させない意思を表示したときは,その財産は,父又は母の管理に属しないものとする。

 A前項の財産につき父母が共に管理権を有しない場合において,第三者が管理者を指定しなかったときは,家庭裁判所は,子,その親族又は検察官の請求によって,その管理者を選任する。

 B第三者が管理者を指定したときでも,その管理者の権限が消滅し,又はこれを改任する必要がある場合において,第三者が更に管理者を指定しないときも,前項と同様である。

 C第27条乃至第29条は,前2項の場合にこれを準用する。

第832条〔管理に関する親子間の債権の消滅時効〕
 親権を行った者とその子との間に財産の管理について生じた債権は,その管理権が消滅した時から5年間これを行わないときは,時効によって消滅する。

 子がまだ成年に達しない間に管理権が消滅した場合において子に法定代理人がないときは,前項の期間は,その子が成年に達し,又は後任の法定代理人が就職した時から,これを起算する。